2010年09月07日

アンカーポーター

アンカーポーター

日付は8月22日,今回のビール造りのレシピはサンフランシスコのあるクラフト・ビールメーカー

「アンカー」のポーターです。ポーターとは,黒くなるまでキャラメル化した麦芽を使用して

造る黒ビールのひとつです。むかしロンドンの荷役さんたちが好んで飲んだのがその名の

由来です。

内容は,ペールモルト1700g,クリスタルモルト200g,ミュンヘンモルト200g,

チョコレートモルト100g,ウィートモルト100g,です。チョコとはチョコレートその物ではなく

それ位になるまで色付けしたモルトです。しかし最近では本当にカカオ入りのチョコ・ビールが

バレンタインになると店頭に並んだりします。原料を焙煎したりキャラメル化したりして色が

濃くなると,出来上がりのビールの味が珈琲やチョコに似たコクが出たりします。

正直今回のレシピは完成品を飲んだ事がわたし,ないのです実は。なのになに故これなのかと

言いますと,単に「アンカー」と言うブランド・イメージに魅せられた・・と言ってもいい。

あのアンカーのレシピならば美味いに決まってる,ならば造ってみよう・・・・と言うまこと

安易な発想です。それと,なんとなく次に造るのは「黒ビール,しかもポーターで」,と考えて

いたので,たまたま本の中からアンカーレシピを見付けたので,と言う次第でした。


上の写真はウチで一番大きい16リッター鍋に56℃のぬるま湯を作り,先ず最初にペーハー調整剤

を少々入れ,あとは原料のモルトをすべて投入して湯に馴染ませ半時間ほどプロテインレストです。

モルトのアミノ酸成分を後で酵母が食べ易いように分解する為です。

それがすんだら湯の温度を67℃に上げ,今度はモルトのデンプン成分の分解作業に入ります。

こうして麦芽は麦芽糖になり,それが湯に溶け込み麦芽糖液(ワート)になります。この行程を

やく90分やり,その後液体成分を濾し取って麦芽粕と分離します。濾し取った液体を再度上から

掛けてやり,また下の方から濾し取る事をしばらく続ける事で,最初濁りや麦芽粕が多かった

ワートが次第に澄んできます。
アンカーポーター

この行程が澄むと今度はスパージングです。仕込み量(今回は10ℓ)の8割の量の約77℃の湯を

麦芽粕の上から注いでやります。こうする事で麦芽粕に残ってる麦芽糖分を回収する事が出来

無駄がなくなります。出汁で言えば「かえし」と言うやつですね。

こうして出来たビールの原液をもう一度鍋に戻し,今度は火力を最大にしてグツグツ煮立てて

不純物を凝固沈殿させ,またビールの変化を促し品質向上を図ります。この行程が90分。その間

灰汁をすくい取ったり,煮詰まるので湯を足したり,また熱湯が大鍋でグラグラしてるので

その場を離れる訳にはいかないのです。

途中ビタリング用のホップを投入します。今回はアメリカン・ビールでは欠かせないカスケードを

45.2gです。それに煮込み終了15分前にアロマとしてやはりカスケードを14g,それと不純物の

凝固沈殿を促すアイリッシュモスをさじ半分くらい。

煮込みが終了したらそのまましばらく放置してホットブレイク。その後急速冷却に入ります。

背丈のある桶に鍋を入れ流水,鍋中には水をいれ凍らせたペットボトルを何回かに分け投入して

冷却を早めます。仕込み量が10リッターなのでそう時間はかかりまりせん。しかしワートの

温度が30℃位になってくると途端に雑菌感染のリスクが高まります。特に空気中にウヨウヨする

野生酵母に取り付かれると,出来上がってくるビールが野暮ったい酸っぱ味を帯びた味になり

台無しです。しかし少々のそれらの干渉はむしろその家の特徴の出た一品になり面白いかも

知れませんね。ただファースト・インフェクションがそれだと不味い事になるでしょう。

そうして30℃以下まで下がったところでイーストの投入です。今回のイーストは前回造った

IPAの澱から培養したものです。なのでハウス・イースト,自家酵母と言った所でしょうか。

しかし前回は培養していた酵母はものの見事に酢酸菌に感染,黒酢になってしまいました。

これはこれて利用価値アリ,なのですが・・・。まったくビックリしました。酢酸菌は酒を

アセトアルデヒトから酢酸に変えます。人間の肝臓でやるのとまったく同じ作業を目に見えない

ほどの小さな菌がやってしまうのです。彼らは酸素のある所でしか仕事が出来ません。だから

自分の酒を酢酸にしたくなかったら密封容器で保管しなければなりません。もっとも蒸留酒

などの高度数ではさすがに彼らも感染できませんが。

こうしてイーストをピッチしてからエアーレーションします。ビール原液に空気を含ませるのは

これが最初で最後。これは酵母が呼吸代謝をして仲間を増やせるようにする為です。そうして

ワート溶液に対し充分増殖した後にアルコール代謝を始めワートはビールへとなって行きます。

アンカーポーター

冷暗所で(と言ってもこの夏は暑かったのでガレージでも30℃近くになってましたが)約2週間

しかし途中で培養バケツの底に溜まった澱を取り除き,その後梅酒用の容器に移し替えたりした

のちにビン詰めしました。
アンカーポーター


ビン詰めの時打栓機の調子が悪く,力任せにハンドル振り絞ったら「バキッ」と音を立ててビンが

首の所で割れる,と言うアクシデントがありまして,なので最後で半端が出ちゃいました。

ちょうどサンプリングにいいので比重を計り,それからグラスに注いで味見してみました。

比重は1.050が最初で今回が1.018なので,まあまあですね。順調にビールに変態してってます。

味は思ったよりビターが効いてる感じ。さすがカスケード,侮れません。まだ醗酵途中なので

当たり前なのですが,ポーターらしい,でもやっぱアンカーレシピなのか,やさしい甘味が

あります。このレシピの特徴としては,普通黒ビールにはもっとチョコやブラックのモルトが

多く入るのですが,これには「えっ,これだけ?」と言うくらい少ないのです。その分色は薄めで

ビール全体が柔らかさや品の良さが出るのではないでしょうか。

何れにしろ今後がまた楽しみです。先ずは2週間後に一本開けて試飲してみましょう。



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Posted by Brewman at 15:22│Comments(0)ビール
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