2012年03月22日

イタリア、食い倒れの旅17トマト編

イタリア、食い倒れの旅17トマト編

カターニャで昼食を取った後、また歩いて駅まで引き返し預けてあった荷物をピックアップ。駅前のロータリーでタクシーをつかまえ空港に行きました。そこで予約してあったAvisのレンタカーを出してもらい、アウストラーダA18を北上して、イタリア有数のリゾート地、タオルミーナに向かったのでした。

ちなみに今回借りた車はフィアットのフォードア小型車。車種はパンタとかなんとかって言ったっけな。濃紺のカラーで、車体の割には室内は広く、トランクも大型スーツケース一つは余裕で入って更にソフトサイドバックなら幾分大きなのでも大丈夫って位です。
乗り心地、運転心地はすこぶる良くって、イタリア大衆車のイメージを刷新させられました。それに引き換えフォード・エスティマの酷かった事と言ったら・・・・・・・・って感じ。
日本でも小型のレンタカーは旅行の度に様々なのを乗って来ましたが、それらと比べても、このフィアットは遜色を感じさせない。いやいや、足回りの機敏な感じは小型の日本車に無いものかも知れません。
アイドリング時のエンジンストップも装備され、環境意識も高い。様々なスイッチ類も操作しやすくなってて、いちいち目で追わなくともちょうど手の届く所に配置してあります。
そう、なかなかどうして、侮れませんねぇイタリア大衆車。 
まぁ、なんつったって、あの跳ね馬フェラーリの親会社さんなんですから。

また余計な余談なんですが、イタリアの旅から帰って来て2ヶ月も経って、Hertzより意味不明な請求がVISAカード経由で来ました。
日本の営業所に頼んで調べてもらっても解らず、ではと思いカード会社に調査を依頼してから約2週間、ようやく回答が来ました。
それによると、イタリアに入国した翌日にフィレンツェの営業所で出してもらったレンタカーでピサの斜塔を見に行ったのですが、我々はどうやら「歴史的建造物のある特別指定地区」に車で侵入してしまったのです。そのエリアは地元の人の運転する車、もしくはタクシーなどしか入っては行けなかったのです。
とは言っても地元のお巡りさんに咎められ切符を切られた記憶は全くありません。 
なんでだろぉ・・・?と不思議に思っていると、カード会社の人は教えてくれたのです。
つまりその特別指定エリアの境界線にはナンバーを読み取るカメラが設置してあり、どの車がそのラインを通過したか自動記録されているとの事です。ナンバープレートで明らかにレンタカーである車の侵入が判明して警察はHertzに通報、それでもって今度はHertzがその時の借り主を警察に通報したと言うワケ。
おお、けっこうハイテクじゃあーん! なんてのたまってる気分じゃありません。
後日カードの明細に意味不明な30ユーロの請求は、つまるところレンタカー会社が警察の要請に応じた照会手数料と言う事なのです。
おお、なんてこったぁ・・・! 説明の途中で私は勝手に「ああそうか、それって罰金だったのね」って早合点、レンタカー会社が立て替えてくれたんだ、なんて脳天気なこと思っとったら、なんだよ、照会手数料とは、トホホほほぉ・・・・・な気分です。
しかもこれからピサの警察の交通課から罰金の請求が来るかも知れないなんてカード会社の方は言います。
妻と相談して、もし来たらどうするぅ?って話しになって、「そんなのしらばっくれちゃえばいいじゃん」「まさかイタリア大使館より拘束要請が日本の警察にでる訳も無いし」なんて言い合いましたが、もし例えば将来再びなんかでイタリアに入国した際、入管審査のPCに我々の罰則金滞納が判明、即強制出国とか、もしくは滞納金にたっぷり滞納加算金が付いて払わされるとか・・・・・・なんてことありえるのだろうかぁぁぁ・・・・・・・なんて考えると結構眠れなくなるのでした。
ちなみにまだイタリアから交通違反の罰金納付に関する書面等は届いていまへん。



上の写真に写っている陶器のマークはシチリアのシンボルです。折れ曲がった三本の脚は三角形をしたシチリア島のそれぞれの岬を表し、真ん中は蛇の髪の毛を持ち見た者を石に変えてしまう女、メデューサです。
何ゆえシンボルマークにメデューサを持って来たのかは知れませんが、一度大噴火したら辺り一面のみならず広域までを溶岩で覆い尽くしてしまう、今でも盛んに活動を続ける活火山エトナを象徴しているのでしょうか。
イタリア、食い倒れの旅17トマト編

エトナ山は標高3323m、結構高いのです。日本では富士を除けばこれ程の山はありませんから。ほぼ一年中こうして雪を抱いている様で、山頂から白くたなびいているのは風雪ではなくて噴火口から上がった煙です。
十七世紀に大噴火してカターニャを壊滅させた他にも大小の噴火は続き、近年も周辺住民が避難を強いられる溶岩の流出や土石流があります。
散々な目にあってコリゴリなのかと思いきや、ところがどっこいでして、むしろこの活火山を観光資源にしてしまっているのです。
バスとロープウェイを乗り継いで標高三千メートル近くまで行く事が出来、その先はガイドが付けば山頂までも行けるとか。
おお、なんとイタリア的と言うか、なんでしょか、このユルさ加減。
多分、日本じゃあり得ないでしょう、こんな頻繁に噴火を繰り替えず山の山頂まで観光させるなんて。 ああ、あり得ない。
もちろん、過去のデータに基づき噴火の動向をきちんとモニターしていると言う自負があるからなのでしょう。これまでに観光客が被害にあったなんて話しはありません。 
しかしスゴい凄い。さすがイタリア!


時に不自由を強いられる地元の住民はどうやらエトナ山を信仰の対象にしている様です。
山に畏怖の念を持ち、同時に恩恵をもたらす畏敬の対象にもなっているのです。
もともと雨が少なく荒涼とした大地。そこに噴火によってミネラル分が豊富に供給されるのです。
噴火は災厄でもあり、恵みでもあるのです。
トスカーナと並んでまた別条件でここはイタリア有数のワインの産地です。中央アジアが原産地の葡萄。その地は年間降水量に乏しいのですが、氷河によって削られた岩肌のミネラルが供給され、ブドウの実に味を含ませます。
このエトナ山周辺がワイン用の葡萄を栽培するのに適しているのがよく判る気がします。

イタリア、食い倒れの旅17トマト編

そしてもうひとつ、ぶどうと並んでこの地で栽培に適しているのがこのトマト。
トマトは南米が原産と言われています。昼には強烈な日差しで照らされ、乾燥と標高ゆえ夜は寒気に晒されます。そんな自然環境が適している作物です。
直射日光の強さならばシチリアも負けてませんでしょう。乾燥もしているので夜は冷え込む。エトナ山の麓での栽培なのでアンデス山脈程ではないにしろ多少は標高もあります。そして何よりやはり土がいいのです。土からの有機養分は乏しくとも、さんさんと照りつける太陽のエネルギーと豊富なミネラル分を吸収して旨味を増すのです。

近年日本ではデザートトマトなるものを良く耳にする様になりました。お値段は随分と高めで形もスマートで素敵です。お味は確かに甘くって甘くって・・・・・。
トマトに限らず・・なのですが、特にトマトはその美味さをどの程度糖分を含んでいるかで商品価値をはかられる様になりました。
生産者の努力のかい、もしくは農産物の研究者の職業的成果と言えるのでしょうが、「ウマさ」を「甘み」と同義化しがちな近年のこの国の傾向には、いささか危ういものを感じずにはいられません。
つまりそれだけ我々の味覚が単純化して来たと言う事でしょう。欧米人、特にアメリカ人の味覚には三種類で足りると言われます。
「甘味」「脂味」それに「酸味」、これだけ。もちろん塩気は必要でしょうが、まぁこれは余り前過ぎるので省略です。
日本人の最近の三味は何かと言いますと、「甘味」「脂味」それに「ダシ味」となります。つまりこれは子供たちが好んで良く食べる日本のスナック菓子の味付けなのです。いわゆる「後を引く味」と言うヤツです。
我々日本人も、急速に微妙な味の機微に疎くなって来ているのでしょう。

トマトにはトマト本来の「味」と言うものがあります。しかし私たちはスーパーで形が良くって日持ちもする、1世代のみのF1種と言うタネより栽培された作物はかり食べて来ているので、それ本来の味がしなくても不満を抱かないのです。生産者も栽培が安定して形も揃うので出荷時の箱詰めに都合の良いこうした種を好んで作ります。しかし一番いい思いをしているのはタネ会社かも知れませんねぇ。


シチリアの強烈な太陽をいっぱいに浴びたこの地のトマトは、恐ろしい程味が濃いのです。
この様なトマトを一度でも味わったなら、もうトマトの評価に甘さを真っ先に求めるなんて事は考えなくなるでしょう。
トマトはトマト。 ああこれがトマト。
言葉では上手く表現しきれない、それそのものの味。
口にしたならば、トマトってこの味だったんだよねぇ、と思う事でしょう。

南イタリアに旅したならば、必ず食べてもらいたいパスタがあります。
「スパゲッティ・ポモドォモ」
トマトのみ、もしくはトマトソースを和えただけのパスタ料理。
トマト以外の具材は塩、オリープオイル、そして控えめなニンニクと鷹の爪だけの一皿です。
少し贅沢な所ではパルメザンチーズがたっぷり掛かってたりしますが、基本的に南イタリアの料理は粉チーズを使いません。
パルメザンは特にシチリアの人々にとっては高価なチーズで、それの代用としてパン粉をまぶしたりします。これはこれで大変食感を良くし、料理に香ばしさももたらします。
以前にも書いた様に、シチリアのパスタ料理は一皿に余りたくさんの食材を使いません。それはその食材の良さを充分に引き立てたいからです。それからするとこのスパゲッティ・ポモドォモは理想的と言えましょうか。とにかくトマトを最も美味しく頂く料理の筆頭に私は挙げたいくらいです。
少なくとも、シチリアン・トマトの美味さをごっつり頂ける一皿に違いありません。余計な食材で邪魔を受ける事無く、濃縮されたトマトの醍醐味を堪能出来ます。
私はもし次ぎこの地に来れたとしたら、これだけを腹がはち切れる程食ってみたいです。その他魅力的な魚介料理はまた翌日にでもすればいいのだし。


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この記事へのコメント
多義にわたる旅行記、毎回興味深く読ませていただいています。
トマトひとつをとっても色々で、テレビでもイタリアの家庭で作る
ソースの旨みなど放映したのを見た記憶があります。
最近は日本でもトマトの種類が増えてきました。
消費者にとっては嬉しいことです。
それぞれのお国には、それなりの日本と違ったお国柄があって
旅行記は楽しいですね。行かれる方は、違ったものが体験でき
それが旅の醍醐味なんだしょうね。
Posted by なっちゃんなっちゃん at 2012年03月22日 19:53
今日は、ナツ様。

シチリアの太陽は強く輝いていました。
それをいっぱいに浴びた作物たちは
大変に美味しかったです。

ひと口にトマトと言ってもいろいろありますね。
食い意地のはった私にとって楽しい旅でありました。
また行ける日が来るのでしょうか?
Posted by BrewmanBrewman at 2012年03月23日 07:41
まだまだお若いから、何回でも出かけられますよ。
今度はどちらへ?
私の分まで楽しんで来てください。
Posted by なっちゃんなっちゃん at 2012年03月23日 21:46
ありがとうございます。
そう願いたいものです。
Posted by BrewmanBrewman at 2012年03月24日 08:30
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