2010年05月27日
小麦ビール造りⅡ
5月5日に小麦ビールを仕込んでから9日目,醸造用バケツの底に溜まってくる酵母のおりや
不要不純物を一度取り除く為の樽換えをしました。日付は5月14日。
何故こんな事をするかと言えば,不純物などのいわゆるゴミなどはもちろんの事なんですが
底に溜まった酵母の堆積物は,そのまま樽に居座らせると「酵母臭」と言うのが付くと
言われています。まぁあまり美味しくないベーカリーなどの前を通りかかると,異様なほど
イーストの匂いがする事があると思います。あれも最初のうちはいい匂いかな,と思うけど
その内えらく鼻に付いて来るもんです。ビールも余りの酵母の匂いが付くと「よくない,かな」
と言う事なんでしょう。
しかし酵母が醸す香りはある意味ビールの命です。ビールを熟成させるのは酵母であり
その熟成に伴って酵母は様々な風味を醸します。
おり引きするのも,きっとよりいい状態で醸してもらうよ,役目がなくなった酵母さんたちには
ご退場お願いします,と言うところでしょうかね。
しかしこの酵母のおり,まだまた役立ちます。
今回こうして小麦ビールを造った理由のひとつには,こうして出る小麦酵母のおりをさらって
再度培養し,パン作りに流用したかったと言うのがありました。
今までは黒ビール酵母を使っていたせいなのか,パンは重たい感じがありましたが
この小麦ビール酵母で焼き上げたパンの出来は,よりキメが細かくしっとりした物に出来ました。
そしてやっぱり,パン自体が軽いですね。そして発酵はより短時間で簡単になりました。
小麦で焼くパンには,やっぱり小麦由来の酵母が相性良かったのかな,とも思います。
逆に今度は大麦やライ麦のパンを普通のビール酵母で発酵させて焼いてみるのも面白いですね。
上の写真はおり引きした5月14日に採取したサンプルです。比重は1.015。
比重と言うのはその液体の真水に対しての濃度,と言ったらいいのでしょうか?
真水が1.000とすれば,それに対してどの程度の重みがあるか,と言う事です。
仕込み時の比重が1.044でした。ですからそれと比べ溶液は軽くなった,と言う事ですね。
何故そうなるかと言えば,最初糖分に満ちたワート(麦芽糖化液)が酵母の働きによって
アルコールに転換されて来ている,と言う事実です。この事から今この溶液はどの程度の
アルコール度数があるかと言う事が判明します。
初期比重-現測定比重÷0.0075,この公式であらわせます。ですから今のところ4%未満くらい。
今後ももう少し比重は下がって来ますけど,ビールとしてはちょっと低いかな・・ま,いいか。
上のグラスの中の液体はまだ大分濁っています。これがそれから更に13日後には・・・・・・・・
こんな感じにまでなりました。そして比重を計測しますと・・・・・・・・
1.012と目盛りが読めます。あまり変わってませんが,まぁ少しは発酵が進みました。
アルコール度数はようやく,かろうじて4%を越えました。ああもう少しモルトを多く仕込むべき
でしたねぇ・・・。でも仕方ありません。苦肉の策として度数を上げる為に他の糖類を添加する
なんて裏ワザもありますが,これは言わば正統なビールからすと反則ワザ。これをしてしまうと
ビール本来の味わいや風味は損なわれ,安っぽい飲み物に成り果てます。
つまりそれをやったのが発泡酒の類です。メーカーは少しでも本物のビールに近づけようと
あの手この手で味に加工をして買ってもらおうと努力してますね。これもひとえに日本では
ビールに掛かる酒税がアルコール度数に関係なく高い為です。ビールの酒税が下がれば
メーカーは苦心して発泡酒などのビール様飲料を造る必要がなくなるでしょう。
日本人って,ほんと努力家ですよね。必要は発明の母ですかね,これが欧米人とかだったら
こんな根拠のない酒税法「おかしーぞぉ!」ってワンヤわんや喧しかったでしょうに。
まぁわれわれのお上に対しての,従順なことと言いましょうか・・国民性ですかね。
酒税法が改定されれば日本にも欧米の様な小規模ビール工房,マイクロ・ブリュワリーが
次々と生まれる事になるでしょう。また個人のビール造りももっと身近になり,ビール文化が
栄える余地があります。逆に古くからの酒蔵などは苦しくなるかも知れません。
仕込から約20日,もういつでもビン詰めOKです。まだ若ビールの状態ですが味には糖分が
殆ど感じられなくなっていまして,ワートはアルコール溶液に転換されている事が判ります。
ビン詰め後はその閉鎖空間で,ビールは酵母による「熟成」と言う二次発酵に入ります。
今の味はまだ薄くって深みがまったくありません。それなりに飲めば酔っ払うのですがね。
メソポタミアやエジプトの時代のビールってきっとこんなんだったのかなぁ・・・・。
しかしちゃんと生意気にもバイツェン・ビールの風味がします。あの独特のクローブと
バナナ様の香りと味です。まだ弱いですが,ちゃくちゃくと小麦ビールとしての生長を
している事を感じさせてくれます。
Posted by Brewman at 15:15│Comments(0)
│小麦ビール造り
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