2012年02月04日

イタリア、食い倒れの旅14スリにはご注意編

イタリア、食い倒れの旅14スリにはご注意編

ナポリと言う街は、我々外国人が単純に思い描く「イタリア」を、最も体現してくれているのかも知れません。
食道楽の街であり、喜怒哀楽がストレートな市民性、猥雑な下町情緒。取り方によって良くも悪くも解釈出来るでしょう。

実際に旅をして体験した事を、どう意味付けするか・・・・・・。

私がナポリを訪れた初日に経験した事は、結果として事なきを得たとは言え不愉快で腹立たしいと言えはそうだし、いかにもナポリらしいディープな体験だったと思えば、ただの通りすがりの旅行者の域を超えた忘れ難き旅の思い出ともなりましょう。



昼過ぎにローマから特急でナポリに到着したのは午後の3時過ぎだったでしょうか。サンタルチア近くに取ったホテルで荷を解いてしばらくくつろぎ、街に出た頃にはもう空が暗くなり掛かってました。
イタリア、食い倒れの旅14スリにはご注意編

イタリア、食い倒れの旅14スリにはご注意編

ミラノ程の規模ではないのですが、ナポリにも立派な美しいアーケード街、ガレリアがあります。そこでちょっとお茶を。
最近まで知らなかったのですが、エスプレッソ・コーヒーはナポリが発祥なんだそうです。何時頃から始めたのかは知りませんが、当時はどうやって高圧スチームを作りコーヒーの抽出をやっていたのでしょうか。もちろん今の様なマシーンがあった訳ではないでしょうに。

ナポリ人はローマの街で良く見掛ける様なカウンターでちょいとカフェやアルコール類を立ち飲み、なんて事は余り好まない様です。
カフェは基本的にテーブル席で、ギャルソンがコーヒー一杯からきちんとサーブしてくれるスタイルを貫きます。はっきり言ってちょっと堅苦しい感じ。
一杯のコーヒーに甘いパントーネがサービスで付いて来るのが当たり前の様で、そうこれで思ったのは、あえて言うならこの街は名古屋が近いかな・・・と言う事。サービス精神が旺盛で、派手過ぎ、見栄っ張り、なんてところ?  実のところ名古屋よく知りません。

サービスされればそれなりのモノを要求されるのが筋。チップは他の街よりやや多目に置かざるを得ない雰囲気です。
ああ、たかがコーヒー一杯。なんかめんどくさいなぁ、なんて思ったり。
まぁ、善し悪しかな。

ガレリアをササッと見学してバス停に向かう途中に用足しでマクドナルドに立ち寄ります。
そうイタリアは公衆便所やその他用が足せる所が極端に少ないのですね。地元の人はカフェのトイレを拝借して・・なんて事をするのが普通みたいなのですが、日本人的感覚ではお茶の一杯も飲まないと気兼ねがあります。まぁ最近はコンビにで用足しだけで利用なんて事も時にあるのですが。

マックに立ち寄ったのはもうひとつ理由があります。Wi-Fiスポットを使わせてもらおうとの魂胆です。しかしこれは上手く行きませんでした。
出国前、ヨーロッパはいたる所に公衆Wi-Fiがあり、街中ではデータローミング・オフの状態でも自由にネット接続が出来ると聞いて来たのでしたが、実際様々な所で無線LANの表示が出るのでしたが、自分の端末で繋ぐには登録がその度に必要なようで、またそれを試みてもそう簡単には上手く行かないのでした。
登録事項が長々とあって面倒で、しかもそれが英語バージョンがなかったりで、推測で進めると結局つまずく・・と言う結果に。
殆どのホテルはWi-Fiが利用可能です。フロントに尋ねると日ごと変わるアカウントとパスードを印字したもので渡してくれます。

ヌオーヴォ城近くのムニチーピオ広場から市バスに乗ってナポリの下町、スパッカ・ナポリにあるピッツァの店、ダ・ミゲーレに向かったのは6時半くらいだったでしょうか。

バス停でしばらく待っていたのですが、夕方のラッシュ時なのか、そこでかなりの人がいて、やって来たバスは既にすし詰め状態。乗るのを躊躇する程の混雑です。
満員状態のバスに乗り込み走り出すと、やけに親切にしてくれる40代と思しきおじさんがしきりに私たちを座らせようと計らってくれるのですが、既にバスは満員御礼。その方、仕舞いには座ってる地元民を立たせ様とまでしてくれます。
おお、それはさすがに流石に申し訳ないぞ、とおじさんを制して。
幾つかバス停に止まった時降り客が出たので空いた席をおじさん素早く確保して妻とセガレを座らせてくれました。
私は立ったままでしたが一先ず安心、後はどの辺りで降りたら一番都合がいいかな、と思いガイドブックの地図でも見ようかと考えていると、私の右隣にいかにも怪しそうな若い男が混雑してるとはいえ不自然に体を寄せて来ます。
バスはウンベルト一世通りをひた走ります。
すると今度は左隣に少し年配の紳士風の男が「申し訳ありません」などと言ってグイグイと押してくるのです。これもどう考えても不自然な動き。そしてはたと気付けば真後ろから少なくとも男2人がピタリと体をくっつけ、つまり完全に私を囲って動けなくしているのです。
自分の前は座席で、なのでもう逃げ場が無い状態。

「おお、これってオラ狙われてるっぺよぉー」

そうです、完全にスリ集団のターゲットになっているのです。
スリにもきっと様々なやり口があるのでしょう。一般に知られているのは巧妙な手口で相手に知られず財布を抜き取る、なんてもの。
しかし私が遭遇したのはどうやらその手の向きではなさそうです。ターゲットを複数で挟み込んで逃げれなくして、むしろ積極的に危機感を煽って動揺させる・・・との作戦の様です。

私は自分が体験して、ああなるほど、日本人にはこの手のやり口が効果的なんだろうなと思いました。
私たちは一般に公衆の面前で事を荒立てたりするのを嫌い、多少の事は我慢しがちです。しかもそれが慣れない外国だったりしたら尚更。
相手が多少妙な奴だと思っても、はっきりと実害が及ぶと確信出来なければ、反撃行動をとる事に躊躇します。実はそれが狙いです。
また恥を嫌う国民性。人前で動揺してるのを取り繕うとしちゃいます。ホントは心臓バクバク、膝が笑いそうになれば成る程、普通層に装うなんて馬鹿な事をしてしまうのです。それも相手の思うつぼ。取り繕うとすればする程隙が生まれるのです。
スリたちにしてみれば、きっと我々は美味しいお客さんでしょう。高度な技術が必要とされるオーソドックスな手口の抜き取りよりも楽で確実。しかも相手はおとなしいと来てる。

きっと彼らは私たちがバス停で待っている時から狙いを絞っていたのでしょう。ガードの甘そうな、子連れ外国人観光客。「カモがネギ背負って」っと見えたに違いありません。プロの手に掛かれば楽でないにしろ「落とせる」確率の高いターゲット。

今思えば妙に親切なおじさんが妻と子供を座らせてくれたのには大変助かったのでした。
いったい彼は何者だったのでしょうか?
初め私は余りにも親切なので彼を疑っていた程でした。でもきっと、そこまでスリの巣窟の市バスだと知らぬ外国人ツーリストを単純に保護してくれたに違いありません。
悪もいれば、善き人もいる。谷深ければ、山も高くなるのでしょう。そんな風に考えれば、ナポリと言う街はとても人間臭い魅力を持っているとも考えられるのです。

さてピンチに陥ったわたし。さてどうしましょうか? 
私とて日本人、正直かなり動揺していたのです。にも拘らず、平静なフリをしたりして・・・・・・。

とりあえずショルダーバックの前のポケットのファスナーはしっかり右手で押さえました。そこに財布がしまってあります。
私はブロのスリとは財布か現金しか取らないと、勝手に思い込みしていたのですが、甘かったのです。
バックのメインの部分には、この旅行に合わせて購入したばかりのビデオカメラとスマホがしまってあります。そこは無防備。

バスは街の幹線道路ウンベルト一世通りを北東に真っすぐ進みます。
スリ集団の四五人の男たちは左右後方からバスの揺れに合わせるフリをして肘や肩を押し付けたり、大袈裟に体を寄せたりし続けています。
更なる動揺を誘い、結果として注意力の散漫を仕掛けて来ます。

座席に息子と座っている妻がこの時「バックに来お付けて!」と声を掛けました。
「おお、さすが我が女房。この危機を察しているのだな」なんて思ったて後になって尋ねれば、夫のピンチなんぞまったく気付いていなかったと・・・・・・。 ああ、なんだよぉー

今思えばもうこの時、盗まれる心配のある物は面子もかなぐり捨てて、しっかり両手で胸に抱え込んだら良かったのです。もっといいのは、囲われているのは判っていたので、その輪の外に無理矢理にでも脱出するのがベストの選択だったのです。
しかし心のどこかにスリに怯えてみっともなく用心深くなってる観光客・・・と周囲に見られるのが恥ずかしい、なんて心理と、こんなに込んでるバスの車内で人を押しのけ移動したとして、もし今自分を囲んでいると思っている人々が、実はスリなんかじゃなくただの乗客だったら気を悪くするんじゃないか・・・なんてためらいが少なからず働くのです。
こうした心理はよくよく後で考えれば、動揺すればする程現状否認と逃避をしてしまいたい、と言う心の働きがあったから、と言う事が判るのでした。
しかし危機の最中、経験が無ければ知れたもんじゃないのです。

私は目線をバスの窓から街の景色を眺めているのですが、意識は自分の持ち物に集中させようと努めています。
けど周りの圧迫感から集中力を削がれる思いです。
なんとか気を切らず目的地近くに早くバスがたどり着かないかな・・と思っていた次の瞬間、ショルダーバックのメイン・ファスナーがジーッとした感触をさせ開けられて行くのを感じました。
私はすかさずファスナー部分をつり革を持っている手を離してサッと押さえに掛かりました。
するとゴツっとした男の手が一瞬手に降れ、素早くその手が引っ込められたのです。

この時の私の心拍は相当高くなっていました。
嗚呼もうこうなったら疑いも間違い無し、と思い、力ずくで右隣の男を押しのけ、男たちの作ったサークルの外に脱出したのでした。
この頃になると周囲の他の乗客も大方気付いてしまっていたようで、スリの集団に避難の目を向けています。
男建ちは次のバス停ですごすごまとまって降りて行ったのでした。

再びバスが走り出すと面白い事に残った乗客たちはまるで我が事の様にピーチクパーチク事の一部始終を騒ぎ立てている様子でした。
妻子を見るとどうもよく判っていなかった感じ。
2人を真っ先に座らせてくれた親切なおじさんは(って、自分ももういいおじさんなんですが・・)厳しい目で真っすぐこちらを見ています。
もしかしたら私が何かしら盗られたのではないか・・と心配してくれていたのではないでしょうか。

それからそう経たない内、妻が「多分この辺りで降りればちょうどいい筈」と言うのでいそいそと下車。
おり際にかの紳士に「Grazie mille!」と言い残して来ました。 
ああホント有り難う。あの方がいなくって妻子が座れていなければ、十中八九やられていたでしょう。
妻と息子に気を配り、自分の持ち物をガードする・・なんて事はきっと無理でしたから。

しかしまぁ、こんなディープなイタリア体験が出来るなんて、なんかホントにイタリアっぽい・・・なんて言ったらイタリア人に怒られまっせ!  でも何事もなく良かったよ。と思えばこれもまた旅のいい思い出、となるのでした。



私は現場でバックの口を押さえておけば、おおかた大丈夫だろうなんて思っていたのですが、気になって帰国後ネットで調べてみれば、荒手のスリさんたちは手術用のメスの刃を使って、殆ど気付かれない内にバックに切れ込みを入れ内容物を抜き取る手口を使う様です。
自分も一度だけオペ用のメスを手にしたことがあるですが、この刃は今では使い捨ての物があり、大変切れ味が鋭いのです。革製品やデニムなどでも上手くすれば気付かれずに切り裂く事が可能で、ましてや旅行用に多く出回っているナイロン時のポーチやショルダーバックなどは簡単に大きな穴が開けられるのです。
私もそれでやられていたらきっと気付かなかったでしょう。
どうぞご用心を!

その他スリの手口として多いのは、レストランやカフェに座った時、椅子の背もたれに脱いだ上着やバックのストラップを掛けて食事や会話に夢中になっている隙に、お隣のテーブルに付いた者が自分と背中合わせに座って、同じ様に椅子の背もたれに掛けた自分の上着のポケットを探るフリをして、こちらのバックの中身や上着のポケットをまさぐって財布やカメラなどを抜き取る・・・と言うやり口。
これは映像などでみれば気を付けていれば防げそうに思えるのですが、実際旅行してみるとけっこうガードの甘くなるポイントなのです。
歩き疲れてホット一息カフェで。あるいは楽しみにしてた地の料理に舌鼓、または観たものの感想を夢中になって話したり。
でも一番はちょっとめんどくさくなって油断しちゃうのです。席に余りがなければ膝に抱えているか、もしくは座った椅子に掛けて置くくらいしか手がないのですから。
フロアーに直接置いておくのは嫌だし、膝に荷物や上着を乗せていてはくつろげないので、となると椅子の背に・・と言う事に。
では貴重品は抜き出しておいてテーブルに置けばいい、なんですが、食事の時に見た目も目障りだし、他のお客さんがもしかしたら不快に思わないか・・・と心配すれば、けっきょく面倒だから椅子の背もたれでいいか、となりがちなのですね。そうとくに海外旅行ではいろいろ不慣れもあって疲れますし。

でもまぁ、皆様、お出掛けの際はくれぐれもご用心を。


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この記事へのコメント
イタリアとその周辺の国々では、スリの話を良く聞きます。
やはり実際にあるんですね。早く気がついて良かったですね。
これも経験で、やはり自身で注意しなくてはいけません。
折角の観光も、気分を害したのでは・・・・・・・。
Posted by なっちゃんなっちゃん at 2012年02月11日 17:35
こんにちは、ナツ様。
ラテン気質の国々は良くも悪くも奔放なところがあります。
何失う事なく幸いでした。
今後はより気をつける様にします。
Posted by BrewmanBrewman at 2012年02月13日 09:18
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